パールマスターが教える、本当の真珠の仕組み 〜養殖〜

さて、本日は「パールマスターが教える、本当の真珠の仕組み」のpart2です。

前回は真珠の種類についてお話しました。
続きまして、今回は

「養殖」

についてお話したいと思います。


愛媛県宇和島の養殖場です。
現在出回っている真珠というのは、ほとんどが養殖された真珠です。
たまに天然と言われている核が入っていない無核真珠というのも、実は養殖です。
では、どのようにして真珠を作るのか、アコヤ真珠を例に順を追ってご説明させていただきます。

一、母貝の育成
まずは真珠をいれるための母貝を育てます。
稚貝から育てる為に、採苗をします。
1、自然採苗:海中に潜って稚貝を採取。
2、天然採苗:海中で貝を受精させ、育てた稚貝を採取。
3、人口採苗:水槽内で受精させ、海に放して育てたあと稚貝を採取。
真珠の種類(貝の種類)によって採苗の仕方も違います。
黒蝶真珠:1、2
白蝶真珠:1、3
アコヤ真珠:2、3

二、抑制(麻酔)
1年半ほど母貝を育てたあと、手術をするために抑制というものをかけます。
これはアコヤ真珠のみの工程になります。(黒蝶、白蝶真珠に抑制をかけると死んでしまう)
あえてぎゅうぎゅう詰めにしてストレスをかけ、冬眠状態にすることによって挿核手術のときにショック死しないようにするのが目的です。
ここまでで2年程度経過。

三、挿核手術
4月〜6月。
丸い真珠を作る為に、核とピース(外套幕といわれる組織、ホタテ貝でいうとヒモの部分)を母貝の生殖巣といわれる場所に入れる手術を行います。
写真はアコヤ貝です。

ピース(外套幕)を切る作業

切ったピースをわかりやすいように色付けし、細かく切ります。

1等核(白)です。母貝の大きさによってどのようなサイズの真珠を作れるか判断し、それに応じた大きさの核を入れます。

この手術の上手い下手で、ナチュラルブルーといわれる真珠が多く出来るか出来ないかが左右されるみたいです。
ちなみに、下手な人のほうがナチュラルブルーが出来やすいそうです。

また、真珠の色というのはこのピース(外套幕)を取る貝の色によって決まります。
販売店によっては母貝の色によって決まるといわれているみたいですが、間違いです。
たとえば、
母貝(白)×ピース(白)=白い真珠
母貝(白)×ピース(黄)=黄色い真珠
母貝(白)×ピース(黒)=黒い真珠
という具合なんです。

代理出産みたいなものですね。
それと、

真珠はこのピースをいれないと出来ません。

つまり、最初に言った無核真珠というのは、核を入れずにピースだけを入れている(淡水真珠)か、もしくは貝が核を吐き出してしまったものなんです。
ですので、天然ではなく、無核でも養殖だといえるのです。
(天然真珠はおそらく、外から大きなショックを受けて外套幕の一部が切れたことによって出来る奇跡のようなものなので、そうそうありません。)
間違った説明で、核を入れないと真珠が出来ないといわれているので、おそらく無核=天然となってしまったんでしょうね・・・
ちなみに、このピースをいれる発想は人間でいう臓器移植みたいなもので、当時そのような技術が無い中で思い立ったミキモトは本当に偉大だと思います。
ただ、ピースによって貝の体内で真珠袋という真珠層を巻くための袋が形成されるのですが、なぜ貝が体の中で核の周りに真珠層を巻きつけるかは未だ解明されてないそうです・・・

四、養生
約1ヶ月ほどおいて貝の体力を回復させる。

五、沖出し
回復した貝を水深3〜5mの光が当たり、流れのある環境に吊るして育てます。

この間は貝掃除や台風の際の移動など、貝を死なせないように様々な苦労があるそうです。

六、浜揚げ
とうとう真珠の出来上がりです。
大抵アコヤ真珠の場合、照り(輝き)が良くなる12月〜1月にかけて取り出します。
おそらく水温が冷たいため、真珠層が締まって照りが良くなるものと考えられてます。


この浜揚げをいつするかによって巻きの厚さが決まります。

・当年物
挿核してから次の年の1月位までに浜上げしたものを言います。
市場のほとんどがこの当年物です。
しかし、品質によって問題あるものもあります。
うす巻き(耐久性に問題有り)
挿核してから1ヶ月〜3ヶ月程度おいてから浜揚げしたもの。
真珠層の巻き厚は0.1mm〜0.2mm程度。
よく、1万円とか2万円程度で売られているものはこれがほとんどです。
巻きが薄いため、穴口から剥がれたりします。

中の白い核が見えちゃってますね・・・

・中巻き
挿核してから5ヶ月〜9ヶ月程度おいてから浜揚げしたもの。
真珠層の巻き厚は0.3mm程度。
真珠科学研究所のパールマーク品質は最低でもこの厚さ以上。
真珠総合研究所の花珠規定(高品質アコヤ真珠)はこの厚み以上です。
花珠についてはまた今度お話します。
厚巻き(当年物)
挿核してから5ヶ月〜9ヶ月程度おいてから浜揚げしたもの。
真珠層の巻き厚は0.4mm〜0.5mm程度。
真珠科学研究所(私が所属していた鑑別機関)の花珠規定は0.4mm以上です。

・越物
挿核してから17ヶ月〜21ヶ月、2年後の1月位に浜上げしたものを言います。
巻き厚も0.65mm以上と凄く巻いていて、希少性も高いです。
ただ、巻きが厚いため多少クリームがかんでいるものやえくぼ(キズのようなもの)も多く、そんなにキレイと感じないものも希少性のためか値段は高くなります。
しかし、照りも優しい輝きで、美しいものは大変美しいです。
良質の越物は見とれます。
ちなみに白蝶や黒蝶は貝も大きく、アコヤより成長速度が速いためほとんどが厚巻きとなっています。

ここでひとついっておきたい事があります。

真珠の品質の説明で、
巻き厚=照り(輝き)
と説明しているお店が多いと思いますが、これはほとんど間違いです。
確かに巻き厚が0.3mm以上ないと美しくないのは確かですが、この説明だと越物は全て当年物よりキレイだという事になってしまいます。
ですが、実際はそうではありません。

あくまで
巻き厚=耐久性
です。

では何が照り(輝き)を決めるのか?

それは
真珠層一枚一枚の薄さ=輝き
です!

詳しくは構造もしくはグレーディングでお話ししますが、これだけは知っておいて頂きたいです。

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